しあわせ

もしかして なくしたというのは錯覚で どこかに 入っているんじゃないかと思って ポケットをひっくりかえしてみるけれど もしかして もっていたというのは錯覚で どこかで 見ただけなんじゃないかと思って カタログをめくってみたりもするけれど もしかして あるというのは錯覚で どこにもないんじゃないかと思って …
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貝殻

砂浜に打ち捨てられた 無数の墓標 その面に 生の記憶を刻んだまま 亡骸の在り処を探して 波打ち際を 行きつ戻りつする 潮は引き 汐は満ち 星は近くなり また遠くなった 波に清められ 風に砕かれて 一粒の砂になったとき ようやく 自らの物語を きしきしと囁きはじめる 束縛から解かれて 砂浜でふと拾い上げた一つの墓標…
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母親たちは戦争に反対する

子どものいる暮らしは 賑やかで慌ただしい暮らし うれしいこともあれば悲しいこともある 山坂の多い毎日を たくさんの荷を背負って越えていくのは大変だから 絶えず忘れてゆくことが わたしたちには必要なのです 水に流すという言葉もあります 過去を水に流す 河川が多く水の豊かなこの国らしい言葉です 色とりどりのプラカード…
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壁を越えて

あきらめを友としないで 目の前に立ちはだかる壁は 越えられないほど高くはないから むしろ流れる小川のよう あなたならきっと飛び越えられる なみだを伴侶としないで 踏み切る足元が ぬかるむから 雨で向こう岸が遠くなるまえに 急いで飛び越えてしまうのよ   空に高く伸びた鉄塔の天辺には 白い三日月が引っ掛かり…
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美しい言葉で

汚い言葉しか覚えてこなかったと、昔を振り返る。 昭和二十年、終戦当時十一歳の少女だった母。 旧満州国で、中国の同じ年頃の子どもたちを からかい、馬鹿にする言葉ばかり覚え、口にしていた。 それを恥じも 疑いもしなかったと。 明るい真昼の、夏の青空の下で、 積み上げた材木のなかに隠れた。 隙間から聞こえる怒声と、悲鳴と、な…
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☆みつめる

雪の、白い結晶の、その針の先の 静かに溶けて、透明な水になるところを 放たれた、白い吐息の、その熱の 空に拡がって、消えてなくなる瞬間を みつめる びーだま がらすだま すいしょうたい 無機質のような有機質は、光は光のまま 影は影のまま すべてを透過させ、名づけることもしないのに 冬のさなか 風に…
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★線香花火

さあ 夏休みももうすぐ終わり 宿題は全部済ませた 都合の良いことに 今夜は風がない 花火セットを片手に 子どもたちがはしゃぐ ろうそくを持って庭に出て 勢いよく火の噴き出す 手持ち花火を わあわあきゃあきゃあ 賑やかに終わらせると 最後に残るのはやはり 線香花火 頼りなげなこよりの先に 火をつけると…
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★五月

五月だから鉢に花を植えた キンレンカとブルーサルビアと 白妙ギクを寄せ植えにした 隣の家の壊れた換気口に シジュウカラが出入りしている 五月だから 卵を抱いているのかもしれない 夕方から気温が低くなって 風も強くなり 雨も降り あまりの寒さにストーブを焚く 季節は進んでいるのかいないのか どっちつかずの五月 …
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★今日という日

白根葵の蕾の色が 薄緑から紫に変わったこと つっぴいつっぴいと 朝の4時半に鳥に起こされること 桜が咲き始めたこと 梅も咲き始めたこと 蟻の巣も開店したこと 図書館へ行ったこと 買い物にも行ったこと 地場野菜の直売所が開いていて うれしかったこと あれもこれもと 野菜をいっぱい買ってしまったこと えんどう豆…
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★春を待つ

苦しい時に苦しいと言えないのって辛い 壊れてしまいそうな予感 余寒 今朝は雪がさらりと積もったよ せっかく地面が出ていたのに また白くなってしまった 春はまだかな 冬に逆戻り 光を掴もうとすると光は逃げてしまう 良いことのあとには悪いこと どこまでも幸せを追いかけようとする 固い意志 石 が 雪で …
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★鳥打ち

霧箱の中に迷い込んだ その鳥を撃ち落とそう 散弾銃で 一枚の羽根も散らさないで きれいに細胞核を撃ち抜こう あしたの方へと飛ぶ その鳥を撃ち落とそう 青空に乱射 心臓を一発で撃ち抜かないで やさしく風切羽根を切り裂こう ひこうき雲が一筋 猟犬たちは居眠り 枯れ草は風に鳴り 笛の音が低く響く 時間の…
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★この場所に

眠たくてぐずっている、赤ん坊のよう。 隙間なくビルに囲まれた大通公園の、 低く狭い空を行ったり来たりしている 鳥の群れ。すでに陽は沈み薄暗がり、 音もなく降る雪。灰色の空はその色を さらに濃くしようとしているところだ。 ミュンヘンクリスマス市の賑やかさ。 明るさ。人いきれ。ほのかな微熱。浮 かれた気配。幸福感。それら…
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★名残

まだ何か残っているのだろうか 空っぽにしたつもりだったのに それともただの名残だろうか 潮の香り かすかな湿り気 ひたひたと満ちてくるかもしれない 予感が震えるから まだ待っていようか、もう少し もう少し 遠く乾いた沖を眺めながら 2012.1.21
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★空を目指す

垂直に抗う 重力に抗う 憧れのままに空を目指すものたちを わたしは美しいと思う 晩秋 裸になった木々の指先が その輪郭線が 空の薄まった青にくっきりと映える 露わになった天辺は木々の野心だ 家々の屋根の向こうに 高圧電線の鉄塔もすっくと立ち 青褪めた巨人のごとく空に逆らえば わたしもつま先立って両腕を伸ばす 人…
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★秋

風に手を放す 木の葉が一斉に枝から離れ旅立つ 花のかわりに季節を色で染めて 紙吹雪のざわめく音を立て、旅立つ 秋は哀しい 指先は冷え、樹心は空洞になる けれども秋は 美しく、潔くもあるのだから 背筋をしゃんと伸ばし 真っ直ぐ進んでゆかねばならないのだ 風に舞う落ち葉から明日の囁き 夢を見よう くり返す風景…
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★とんぼ

とんぼが ことしもむすうのとんぼがすいへいにとぶ なつのおわり ひとりではないということ けしてひとりではないということ みずのにおいに とのさまがえるがぐふとなく はかげにかくれる とおりあめ ゆめではないということ けしてゆめではないということ あいするのではなくにくむのでもなく こわさないようにそっ…
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★ありふれた奇跡

昨日のスープに水を足して火にかける 少し味を足す 日常とはそんなものなのかもしれない 乾いた喉を潤すように雨の降る 夜更けに 何を見ても何を聞いても波立たない 平坦な気持ちを持て余している 昼の熱が夜の闇に奪われていくのは 至極当然のこと さあ 冷めていくスープを そろそろ火にかけ 温める時間 知ってい…
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☆草花たち

なぜだろう ひとりで見上げたい空がある なぜだろう ひとりで歩きたい小道がある 踏み拉かれるのはいつも名もない草花たちだ (ほんとは名前があるのだが (呼ばれてうれしいか 知らないが 美しいとはいえない花の咲く (それらはほんとに花なのか 芥のような種を落とす (いのちはどのように折りたたまれているか 草花たち …
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花鳥風月

花の美しさを謳わない 鳥を愛でない 空の青は本物ではない 緑は翠ではない 風は生ぬるい 月は霞んでいる 言葉は自立せず 塩辛い水が泥濘を作っている 抉り取ってしまえ 干乾びた土地の真上に建てられた影の街を 崩壊させるために 解体し浄化し再生し 澄みきった青を孵化させるために 散る花を謳わないで 落…
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一秒前 一秒後

一秒前と 一秒後と 何が変わったのだろう この冷たさは 寒々とした静寂は 後悔は 時間はどうして逆流しないのだろう 海から河へ 流れていく水もあるというのに なぜ取り戻せないのだろう あなたを 一秒前と一秒後のあいだに横たわる空白を 掴めないまま 今日は 喪服を仕舞い 明日は 家の中を片付け 明後日に…
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